大梅寺とその文化財       

大梅寺とその文化財    

 大梅寺は、富加町羽生に所在する黄檗宗のお寺です。寺伝によれば、羽生の住人たちが、平安時代に後一条天皇から授かった観音像を、簡単なお堂を建てて信仰してきましたが、江戸時代になり、井戸宗太という人物が江戸に行き、領主である旗本前田氏から現在の寺領を貰い受け、観音堂を築いたそうです。元禄8年(1695年)に地元古老がここに、黄檗宗の今渡円通寺(可児市)から鉄面和尚を招いて、大梅寺を開きました。

木造聖観世音菩薩立像(岐阜県指定重要文化財)
木造聖観世音菩薩立像(岐阜県指定重要文化財)

本尊である木造聖観世音菩薩立像には、2つの通称があり、それぞれおもしろい伝承が残っています。

 大梅寺に、寛文11年(1662年)に田原小松寺住職の潮音和尚が書かれた『慈雲山大梅寺化縁偈併引』という文書が残っています。この文書は、羽生村の信者井戸宗太が観音堂を建立するために、潮音和尚に書いてもらった寄付募集の趣意書に当たるものです。この文書には、由緒について記されています。『平安時代に羽生の住民が征役に従って、その功により後一条天皇から聖徳太子御作の 聖観音の木像1躰を頂戴して帰り、この地に寺院を建てて安置した。』とあります。
 作者は不明ですが、製作年代は平安期と推定されています。桧材を使用した仏像で、像高は約90㎝です。


― 身代わり観音 ―
 

 隣村の今泉村に梅村一等という郷士がいた。信仰心がいたって薄く、酒をよく飲み、乱暴する悪い癖があった。ある日、夕食の酒に酔って下男に乱暴をはたらき、そのあげく、刀を抜いて下男の肩に斬りつけた。下男は血に染まってその場に倒れた。ところが翌朝になって梅村の前にあらわれた下男はいつもと変わったところは全くなく、不思議に思った梅村がその訳を聞いた。「昨夜は酒の席でそなたの肩を切ったように思うが」すると下男は、「私は大梅寺の観音様を信仰していて、いつもお参りしております。昨夜は殺されると思って、一心に観音経を唱えておすがりしましたら、観音様が私に代わって危ないところを助けて下さいました」と言った。梅村は驚いて大梅寺に走り、観音様を見るとその右肩に切り傷がついていた。それを見た梅村はその場にひれ伏して罪をお詫びし、それからというもの観音様の信者となり、善い人となって一生信仰を怠らなかったという。
 それから人々はこの観音様を『身代わり観音』と呼んで災難から守ってくださるありがたい仏様として一層信仰の心を深くした。たしかに本尊聖観世音菩薩像の背中右肩には、今も切り傷が残っている。


― 梅の木観音 ―  

 天正6年(1578年)のこと、今の大梅寺になる前のことであった。ある晩どうしたことか、観音殿が火に包まれて燃え上がった。村人たちはびっくりして駆けつけたが、手遅れで何ともすることができなかった。「観音様が燃えたら大変だ」「仏様を助け出せ」人々は大声を出して騒いだ。しかし、火の勢いは盛んで、飛び込むことはできない。その時、燃えさかる赤い火の中から黒いものが飛び出した。そして火はやがて下火になった。その残り火の中で、人々は堂前の梅の木の側に厳然と立ってみえる観音様の姿を見た。「あっ、観音様だ。」みんなは喜びの声をあげて、その前にうずくまって手を合わせた。それからこの観音様を『梅の木観音』と呼ぶようになった。


大梅寺鉄面和尚自筆の大般若経 大梅寺鉄面和尚自筆の 大梅寺鉄面和尚自筆の
▲ 大梅寺鉄面和尚自筆の大般若経 ▲ 大梅寺鉄面和尚自筆の
観音経の解釈書
▲大梅寺鉄面和尚自筆の
観音経の解釈書

 鉄面和尚は多忙な寺務のかたわら、この大若の写本の仕事を精力的に進めた。細字でびしり書かれているのを見ると、和尚の努力の跡が浮かびます。こうした教典を残すことは教典の研究の他に修業と衆生済度の祈願を込めたのです。また観音経の解釈本は鉄面和尚の学の深さを示すものです。
 京都宇治万福寺管長であった村瀬玄妙師は、その著書の中で黄檗の学者の一人として鉄面和尚を数え、この観音経の解釈本をとりあげてい ます。


-徳川徳松君の位牌とその厨子(町指定重要文化財)-

 旗本前田定次は、慶長18年(1613年)生まれ、元和9年(1623年)に10歳で将軍家光に謁見し、上総国山辺郡の300石を与えられ、五代将軍綱吉に仕え、嫡子の徳松君の御守役を務めることとなります。しかし徳松君がわずか5歳にて死去してしまい、その後定次は、位牌をまつり供養していました。寛文元年(1661年)に前田氏は羽生(富加町羽生)を賜り、ここに羽生村と旗本前田家との関わりが始まり、本位牌は享保9年(1724年)に前田家当主の前田数馬によって大梅寺へ奉納されたものです。

徳川家徳松君の位牌とその厨子 徳川家徳松君の位牌とその厨子
▲ 徳川家徳松君の位牌とその厨子 ▲ 徳川家徳松君の位牌とその厨子



所在地
加茂郡富加町羽生



お問い合わせ
・ 富加町郷土資料館 TEL 0574-54-1443
・ 富加町教育委員会 文化財係 TEL 0574-54-2177

ページトップへ